理事長所信

2024年度理事長　加藤　拓

現在の日本は、VUCA（ブーカ）の時代と呼ばれ、あらゆるものを取り巻く環境が複雑さを増し、将来の予測が困難な状況と言われております。社会課題としても人口減少による「少子高齢化」「後継者不足」「介護問題」など多岐にわたります。そんな課題を解決するべく、チャットGPTなどの生成AIやロボットが共生するデジタル社会の未来の実現にむけての動きは着々と進んでいく一方で、異常気象による自然災害は年々その猛威を増し、新型コロナウイルスも感染の再拡大が今後も予測されております。急加速する時代の変化に、我々はどこか現実を生きることに精一杯な状況に追い込まれているのではないでしょうか。
我々が住まう西入間においても、人口減少による「空き家問題」、「地域コミュニティーの衰退」や「企業の担い手不足」など問題は多岐に渡っており、特に25歳～34歳の若い世代の地域外への転出が転入を上回っている現状であります。西入間の一部は「消滅可能性都市」として指定され、今後の存続の危機に立たされているという現実に、自分の故郷がなくなる危機感を感じております。

それは、私たち西入間青年会議所の組織においても同様で、会員数の減少に伴い、役員の担い手は不足し、運動の発信力は弱まり、地域での存在意義は低下していくという存続への危機感を抱えている状況です。このまま若い世代の流入が進まず流出の増加が進むと、まちも組織も今後も多くの問題が解決しきれずに残ったままとなり、問題はさらに山積みとなります。

では、なぜ若者の流出を止められないのでしょうか。その要因は、就職などの「環境の変化」に伴ってこのまちから転出せざるをえない状況や、このまちで暮らしていく理由が特にないなど様々ではありますが、一番は、我々が若者に選ばれる価値観にまちも組織もイノベーションができていないことにあります。多様な価値観を認めあう現代の若者に、我々が以前から大事にしてきた価値観を押し付け、枠組みにはめるようなことは合いません。今こそ、改めてまちと組織の当たり前となっている枠組みをリフレーミングし、多様な価値観を前向きに認め合うマインドへイノベーションしていくことが必要なのです。

では、どうすれば若者に選ばれるまちにすることができるでしょうか。西入間には、城西大学、女子栄養大学、明海大学、東京国際大学、埼玉医科大学、日本医療科学大学、東京電機大学の7つの大学があり、鶴ヶ島駅をメインとしている東洋大学も含め、多くの大学が地域にあります。その強みを存分に生かし、これからは、大学と連携し、若者の新たな価値観と発想を取り込んだまちづくりをしていくべきであります。全く知らなかった他人同士も、かかわりが増えていくうちに、その魅力を知り、なぜかもう他人事ではなくなっていくという経験を皆様したことがあると思います。そう、学生や若者を我々の運動にどんどんと参画させ、多様な人の知性（HI）の集結と新たな発想により、若者にとって魅力的なまちづくりをしていくのです。

新しい価値観との出逢いや体験は、枠組みをリフレーミングする為のマインドを育み、イノベーションを起こすのに必要な要素です。若者と共に創るまちは、若者に選ばれるまちとなり、そこで住まうひととまちに、多様な価値観を前向きに認め合う風土を根付かせ、「前向きな心で誰もが自分らしく生き生きと輝く」そんな、明るい豊かな社会が実現されていくのです。

そこで、2024年度公益社団法人西入間青年会議所は、ビジョンに「多様な価値観を前向きに認め合う、若者に選ばれ続ける西入間の創造」を掲げ、若者の流出と担い手不足という地域課題に向き合い、若者と共に創るまちづくり運動を展開して参ります。そして、基本理念に「一人ひとりが自分の置かれている環境で精一杯本気で努力する」という「一燈照隅」の考えをもち、一人ひとりがもつ光輝くダイヤモンドを尊重し合いながら、次の6つのことにチャレンジしてまいります。

1）若手人財の発掘と新たな分野の開拓による会員拡大
2）大学との連携による新しいまちづくり組織の確立
3）若者の発想を活かし地域課題を解決する社会実験
4）次世代の郷土愛を育み逞しく生きる力を育む青少年の新たな継続事業
5）若者の興味関心をひきつけるSNS広報によるファン創り
6）組織のリフレーミングとマインドイノベーションです。

今の私たちに必要な力は、希望をもたらす変革の起点となる勇気ある一歩を踏み出し、新たな未来を創っていく力です。今こそ、まちに貢献するリーダーを輩出し続ける団体として、この不確かな先の見えない時代に、未来への一筋の光をここに示すときです。まちに誰かに必要とされる団体へと、その存在意義を示してまいりましょう。